大判例

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東京地方裁判所 平成7年(行ウ)310号 判決

原告

越前屋ハウス株式会社(X)

右代表者代表取締役

前山志郎

被告

東京都知事(Y) 青島幸男

右指定代理人

友澤秀孝

鈴木朗

事実及び理由

第三 争点に対する判断

一  行政不服審査法二条二項、七条によると、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内になんらかの処分その他公権力の行使に当たる行為をすべきにかかわらず、これをしない場合には、右申請をした者は、異議申立て等をすることができるとされている。そうすると、同法によって不服申立ての対象となる不作為は、法令に基づく申請に対するものに限られることが明らかである。

そして、私人のした申請が法令に基づくものであるというためには、法令上、私人が行政庁に対し一定の事件について処分その他公権力の行使に当たる行為をすべき旨を要求する具体的請求権を有するものと認められることが必要であるが、右申請権は、必ずしも法令の明文をもって規定されていることを要せず、当該法令の解釈上認められるものであれば足りるものと解される。

二  そこで、以下、本件要望等が法令に基づく申請といえるかどうか検討する。

1  都市計画法七条一項、一五条一項によると、市街化区域及び市街化調整区域に関する都市計画は都道府県知事が定めるものとされ、同法二一条一項によると、都道府県知事は、都市計画を変更する必要が生じたときは遅滞なく当該都市計画を変更しなければならず、同法二一条二項において準用する同法一七条、一八条によると、都道府県知事は、都市計画を変更しようとするときは、その旨を公告し、当該都市計画の安を公衆の縦覧に供すると共に、同案に対する関係市町村の住民等からの意見書の提出を許し、関係市町村の意見を聞き、都市計画地方審議会の議を経てから行わなければならないとされており、これらの規定に照らせば、同法は、健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動を確保するために同法上課される土地利用に対する制限を適正なものとするために、住民その他の利害関係人の意見を都市計画に反映するよう配慮していることはうかがえるが、同法及びその関係法令をみても、それ以上に、都市計画区域の住民等に対し、都市計画の変更をすべき旨を要求する具体的請求権を付与する旨の規定は存在しない。

2  また、ある地域を市街化調整区域に区分する都市計画決定が告示されて効力を生ずると、当該地域内においては開発行為が原則として許可されず(都市計画法三四条)、開発許可を受けた土地以外の土地については、原則として建築物等の新築、改築等が禁止される(同法四三条)ことになるから、右決定が、当該地域内の土地所有者等に新たな制約を課し、その限度で一定の法状態の変動を生ぜしめるものであることは否定できないが、かかる効果は、当該地域内の不特定多数の者に対する一般的抽象的なそれにすぎず、右決定により右地域内における建築が市街化調整区域に係る開発行為とされた結果、右建築を妨げられている者等が右建築の実現を阻止する開発不許可等の具体的処分をとらえ、前記の市街化区域及び市街化調整区域の区分が違法であることを主張して右処分の取消しを求めることは格別、私人の側に一般的に右区分の見直しを求める申請権があると解することもできない。

そうすると、本件要望等を、行政不服審査法二条二項にいう法令に基づく申請と解する余地もないことに帰する。

3  これに対し、原告は、被告には市街化区域と市街化調整区域の区分を見直す義務があり、市街化調整区域内に土地を所有する原告は、民法四一四条に基づいて、この義務の履行を請求する権利を有する旨主張する。しかしながら、同条一項は、私法上の請求権の強制履行請求権、すなわち私法上の請求権が存在するときは司法機関に対してその強制履行を請求することができる旨を、同条二、三項は、作為、不作為請求権の執行方法をそれぞれ規定しているのであって、強制履行されるべき私法上の請求権の発生根拠を提供するものではなく、まして、都市計画の変更を求める請求権の根拠となるものではない。

また、原告は、行政不服審査法上不作為についての不服申立てが規定されている以上、関係法令にこれを排除する規定がない限り国民は一般的に行政庁に対する申請権を有し、行政庁にはこれに対応する応答義務がある旨主張するようである。

しかしながら、同法にいう「不作為」とは法令に基づく申請に応答しないことであって、本件要望等が法令に基づく申請とはいえないことはすでに説示したとおりであるから、原告の右主張は失当である。

4  したがって、本件要望等が法令に基づく申請とはいえないことは明らかであるから、これを理由に本件異議申立てを不適法として却下した本件決定は適法である。

(裁判長裁判官 富越和厚 裁判官 竹田光広 岡田幸人)

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